「食物繊維をとらないとうんちが出ないよ!」「だから野菜を食べないと!」なんて声を良く聞きます。食育の現場でも、野菜を食べる理由に「便通」の話が取り上げられます。(栄養士の私もそう伝えていた)
偏食の人もしくは偏食の子を持つ親には耳の痛い話です。しかし、野菜をほぼ食べない私の息子は毎日快便。野菜を食べる親より快調です。これは一体なぜか?長年の謎でした。
それが2020年12月に出された最新の「日本食品標準成分表2020年版」に答えがありました。実は息子がモリモリ食べている白米にこそ秘密があったのです。
偏食で悩む方へ、野菜が不足していても食物繊維はとれるという話をしたいと思います。
目次
実は白米の食物繊維は多かった
一つ前の文科省作成「日本食品標準成分表2015年版」では、白米ご飯の食物繊維総量は100g中0.3gでした。しかし、2020年12月に発表された「日本食品標準成分表2020年版」では、100g中1.5gになっています。
食品が変わらないのに、数値がこんなにも大幅に変更になることは、とても珍しいことです。ちなみに、1.5gがどれほどの量か良くわかない方の為に、主な野菜と比較をしてみます。
食品名 | 食物繊維総量(食品100g中) |
ご飯(水稲めし、うるち米) | 1.5g |
たまねぎ(生) | 1.5g |
にんじん(皮むき、生) | 2.4g |
だいこん(皮むき、生) | 1.3g |
キャベツ(生) | 1.8g |
しかも、100gのご飯というと、小さめのご飯茶碗に1杯ほどの、決して多くない量なのです。
朝・昼・夕とご飯を1杯ずつ食ベて、仮に360gのご飯を食べたとすると、5.4gもの食物繊維がとれてしまいます。
18~69歳で1日当たり男性20g以上、 女性18g以上とることが望ましいと言われている食物繊維。今までは360gのご飯を食べても1g程度しかとれないと思われていたのに、5.4gもとれるんです。
白いご飯を食べても食物繊維がとれないので、雑穀を入れて工夫をしてきた筆者ですが、白いご飯からだけでもこんなに繊維がとれていたなんて驚きです。
子どもにも「野菜を食べないとうんちが出なくなるよ!」なんて言って、何とか食べさせないといけないと苦心されているママがたくさんいたと思います。
白いご飯だけでも、野菜並みの食物繊維がとれる!
なお、文科省が作成した最新の食品標準成分表2020年版はネットで公開されているので、皆さんも見ることができます。しかも、食品成分データベースでは、2019年更新分までですが、知りたい食品の成分表が検索できるのでとても便利です。
気になる方はのぞいてみてください↓
なぜ食物繊維がこんなに増えたのか
先ほども言いましたが、食品が変わらないのに、なぜこんなにも食物繊維が増えたのでしょうか。
実は、食品標準成分表2020年版では、食物繊維の「定義」が変わったことが原因です。
今までは、消化しづらい糖(食物繊維や糖アルコールなど)も糖分と見なされ、炭水化物として計上されていました。しかし、2020年版の食品標準成分表では食物繊維が見直され、消化しづらい糖分が食物繊維として含まれるようになったので、白米の食物繊維総量が増量したというわけです。
え?食物繊維も糖なの?糖アルコールって何?そんな声が聞こえてきそうです。その辺りについても、いずれご紹介したいと思います。
突然ご飯の食物繊維量が増えたのは、食物繊維の「定義」が変わったから
息子が野菜を食べないのに快便な理由
我が家の息子は9歳ですが、毎日ご飯ばかり食べておかずをあまり食べません。
この食事は、江戸時代以前の食事形態に似ていると思います。
また、野菜もあまり食べません。しかし、毎日快便で、何よりにおいが臭くないのも特徴です。
今まで、なぜ野菜を食べないのに快便なのか、理解ができませんでした。しかし、白米の食物繊維総量が多いことが判明し、長年の疑問がなくなったのです。
食物繊維をとると、便秘が治る?
便秘で悩んでいる方は、ご飯をしっかりとろうと思って頂けたのではないでしょうか。
しかし、厚労省の作成している「日本人の食事摂取基準」にはこんな記述もありました。
食物繊維20g/日で糞便重量が増加し、良好な排便が期待できるとした報告がある反面、糞便重量の増加は認められるが便秘が改善するとは結論づけられないとした報告もある。
厚労省「日本人の食事摂取基準 2015年版」より引用
食物繊維を多くとると、便の一回量は増えるけれど、だからといって便秘が治るわけではないという報告もあると言っています。
食物繊維摂取量が便秘症にどの程度の影響を与えているのか、また、どの程度の食物繊維摂取量が良好な排便習慣に寄与するかについては、いまだ十分に明らかではない。
厚労省「日本人の食事摂取基準 2015年版」
食物繊維をたくさんとれば、良い排便習慣につながるか、その因果関係はまだわからないという事ですね。
便の主な成分は食物繊維ではない
じゃあ、どうしたら便秘は治るんだーとなりますね。それは、便が何で出来ているか知ると、解決の糸口となりそうです。
案外知らない方が多いのではないかと思いますが、便の主な成分は食物繊維ではありません。
便の成分は以下の通り。
- 70~80% 水分
- 10~20% 腸のはがれ落ちた細胞と食物繊維
- 10% 腸内細菌の残骸
お分かりの通り、便の主な成分は水分です。
食べ物からの食物繊維は、腸のはがれ落ちた細胞と合わせても全体の10~20%を占めるに過ぎません。
従って、食物繊維を増やしたからといって、便秘が解消されるとは言えず、他にも水分量や腸内細菌の量なども関わってくる事が想像できますね。
ただ、腸内細菌のエサは食物繊維なので、食物繊維を増やすと腸内細菌も増えることになります。
腸内細菌を増やす方法については、過去のブログでも紹介しています↓
まとめ
野菜嫌いな人でも、白米をしっかり食べると食物繊維がとれ、お通じが良くなると期待できる
便秘を防ぐには、食物繊維をとることに加えて、水分をしっかりとることも大事
食物繊維の不足が、生活習慣病に関係している報告は多いです。
どんな生活習慣病と関係しているかというと、心筋梗塞、脳卒中、糖尿病、乳がんや胃がん、などの病気があげられています。
またコレステロール値や肥満との関連もあるとされています。
生活習慣病予防の為にも、しっかり食物繊維をとりたいですね。
ご飯からもこんなに食物繊維がとれるのです。
和食の素晴らしさを再確認しました。