【米】吉野ケ里遺跡が滅んだ理由と米の関係

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最近読んだ「日本の米」富山和子著を引用させていただき、先日は式年遷宮と米の関係についてブログでお話した。今日は、吉野ケ里遺跡と米の関係について、この本を参考にしてお話したい。

吉野ケ里遺跡といえば、佐賀県にある弥生時代の遺跡という風に認識している。皆さんも歴史の授業でそう習ったのではないか。イメージの中には、米を育てている人たちが出てくる。吉野ケ里遺跡と米は、もちろん関係あるでしょ。と、思いの皆さん。実は、滅んだ理由も米かもしれないという話を知っていただろうか。私は「日本の米」を読んで初めて知った。

吉野ケ里遺跡とは

まず、簡単に吉野ケ里遺跡のことをおさらいしよう。この遺跡は1989年に発見された。もともとみかん畑だったところを、工業地帯にしようと開発していた矢先に発見された。

魏志倭人伝に記された世界と似ているということで、ここが邪馬台国だったのではと話題騒然となった。候補の場所が他にもいくつかあるが、吉野ケ里遺跡もその候補場所の一つとなった。

集落の規模も大きく、弥生時代の前期・中期・後期と三つの段階を経て、その規模を拡大していった状況がうかがえる。高床式の倉庫群がずらっと並び、高い物見やぐらが復元されている。それほどに米が収穫され、まわりには広大な水田も広がっていたのだろう。

この王国は紀元前3世紀にはじまり、約600年続いだのち、3世紀後半に終わっている。小さなムラから始まり、次第に成長して、ついには王のいるクニへと発展した。しかしなぜだか、この台地上から姿を消してしまった。

次の古墳時代になっても、この吉野ケ里の辺りには大集落が見当たらないということだ。なぜなのだろうか。実は、それが、「米」と関係するかもしれないというのだ。

吉野ケ里が消えた秘密は「アオ灌漑」にある!?

「アオ灌漑」とは?

吉野ケ里が消えた秘密に、「アオ灌漑」があると、佐賀県出身の地理学者、広島大学名誉教授の米倉二郎さんが発表した。

「アオ灌漑」という言葉を知っているだろうか。私は初めて聞いた。「アオ」は、漢字で書くと淡水と書く。満潮時、海水に乗って逆流してくる川の水を言う。

もう少し詳しく言うと、川から吐き出された淡水は、干潮時にはるか沖合いに運ばれる。やがて満潮になると、海水の上に乗っかって、高い水位で陸地へ向かって押し戻される。

低地であれば、定期的にその「アオ」が地面を潤してくれる。いちいち川をせき止めて、水を水田にひいてこなくても済んでしまうのだ。川が吐き出した水を、海が陸地に返してくれる、これが「アオ灌漑」である。

「アオ」が来そうなところに稲を植えていけば、どこまでも水田は拡大する。こうして広げていったのが、吉野ケ里なのではないかという。

そういえば、世界の各地を見ても、川のほとりの海沿いで文明が発達していったのではないか。こうした自然の力に頼ったアオ利用の田畑づくりは、外国でも行われていたようだ。

低湿地から高いところへ文明が移る

しかし、この素晴らしい案も、徐々に避けられ、人々は低湿地から山間の高いところへと場所を移していく。なぜなら、こうした低湿地は、年中水につかり洪水にも流されやすい土地だったのだ。

水利用の技術が進むと、必要なときに水を引き、不要になれば排水できる場所の方が好ましくなった。生産性もはるかに高い。

稲作初期の時代、こうした水利用の技術を得てまわりの集落がより高い生産力を持つようになったとき、海の灌漑にのみ安住していた吉野ケ里が衰退した。これが、私が「日本の米」を読んで知った、吉野ケ里と米の関係である。

クニが繁栄するには、まず第一に人口が増えていくことが大前提だ。それを支えたのが米だった。だから、周りの国々や戦国時代の武将だって、土地を耕させ、水田を広げた。水田には向かないような悪条件な土地も、知恵と工夫と労力と、それこそ命がけで水田に作り上げた。

今現在、平たんになっている土地は、明らかにそうした人の力で平たんにされた土地であるそう。住んでいる近辺の土地、旅行した時に見る土地、それらを、そうした目線で見ると、今までとは違った目線で土地を見ることができるなぁと思う。

話がローマ帝国にまでおよぶ

著者である富山和子さんは、「一時的な技術に依存して衰退した吉野ケ里」を、「ローマ帝国の衰退」に重ねている。

都市や王国の盛衰を考えると、おおむね次のようなパターンをたどっているという。

一つの技術の優位性に頼る(例えば貿易)→農業を軽視する→食料は植民地依存→海軍力が衰える→自国の土地は疲弊(農業を軽視したから)→農業のにない手がいない→国が滅びる

どこかで聞いたことのある話ではないだろうか。農業のにない手が少なくなり、食料を輸入して食料自給率が下がっているこの日本の状況と似てはいないだろうか。

朝はパン派だなんて言っていないで、「米」を食べよう!それが日本の水田、農業を守ることにつながる!と私は思っている。

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