女子栄養大学副学長の香川靖雄先生が書いた「新型コロナウイルス最新情報と予防栄養学」の記事を読みました。記事で特に驚いたのがこの記述。なんと、「BMI30未満の軽度肥満者の感染防御能が高い」とのこと。
つまり、「ちょっとだけ肥満」の人達は、コロナに感染しても重症化しづらいということです。
なるほどと思いつつ、医学的・栄養学的な表現が多く、一般の方には浸透しないかなとも思いましたので、もう少しかいつまんで皆さんにご紹介したいと思います。
コロナウイルスに負けない体づくりに役立てば幸いです!
ちょっとだけ肥満の人たちの感染防御能が高い!?
ちなみに、「ちょっとだけ肥満」というのはどのくらいの体格なのでしょう。それを表すには、やはりBMIを使います。
BMIとは、体重と身長から計算する体格指数のこと。このような計算式で出します。
例えば身長150㎝体重50kgの人だと、
50➗1.5➗1.5=22.2222、、、 つまりBMIは22です
体重の単位がセンチじゃなくてメートルなのに気をつけてください。150cmの方は、1.5mになおして計算します。
そして、2020年版の厚労省「日本人の食事摂取基準」だとBMIによる体格はこうなります。
年齢 | やせ | 標準 | 肥満 | 高度肥満 |
18〜49 | 18.5未満 | 18.5〜24.9 | 25以上 | 30以上 |
50〜64 | 20未満 | 20〜24.9 | 〃 | 〃 |
65以上 | 21.5未満 | 21.5〜24.9 | 〃 | 〃 |
年齢によって、「やせ」や「標準」の人達の数値は違うのですが、肥満または高度肥満は同じ数字です。
今までの栄養学では肥満を目の敵にしていました。肥満に該当してしまうと、食事を見直しましょうとか、運動しましょうとか、指導が入ったものです。
しかし、上の表の「肥満」に相当する軽度肥満者の新型コロナウイルス感染防御能が高かったとなれば、今後の栄養指導も変わっていく必要が出てくるかもしれません。
ところで、感染防御能って何?
ちなみに「感染防御能が高い」というと、感染しづらいのかな?と思ってしまいます。
しかし、先生の記事を読むとそうではなく、「感染しても重症化しづらい」という意味で使われているようです。
新型コロナの症状というと、まず思いつくのが発熱と肺炎ですね。
感染後の十分な抗体ができるまでの1~3週間の高熱と肺炎に耐える能力を「感染防御能」と言っています。この時期を乗り越えられるか、そうでないかが生死を分けることになるのです。
その2つの症状に「ちょっとだけ肥満」の人たちが強いことがわかってきました。
ちょっとだけ肥満の人達はなぜ新型コロナに強いのか
新型コロナに強い理由1「発熱に強い」
新型コロナウイルスに限らず、人は体温が1℃上昇すると13%代謝が増えます。つまり、発熱させるために、人はエネルギーをたくさん使うのです。
もし「やせ」の方だったら、体に余分な貯えがないので、発熱するためのエネルギーを生み出せません。
体は発熱することで、ウイルスや細菌を死滅させようとします。発熱が出来ないというのは、病気にとってはマイナスです。
新型コロナに強い理由2「肺炎に強い」
ちょっと肥満の方がなぜ肺炎に強いのか。それは発熱に強いことと関係があります。
肺炎になると発熱が伴うのです。発熱時は誰しも食欲が減退します。肺炎による咳がひどい時も、食欲が出ないのは想像がつきます。
ちょっと肥満の人達であれば、多少食欲のない時期があってもエネルギーを保つことができます。しかし、やせの人達はそれが難しくなります。
下の図は、肺炎で入院した患者の死亡率をBMI別にした図です。
やせの人達は、標準の人達と比べて2倍近く死亡率が高いです。
それに比べ、ちょっとだけ肥満の人達は標準の人達より若干死亡率が低いのです。
ちょっとだけ肥満の人達よりも、むしろやせの人達への指導が必要になるのではないでしょうか。
注意!高度肥満の方にはあてはまらない
体重が多めで、健康の為にやせようと努力されていた方には朗報続きだったのではないでしょうか。
しかし、注意していただきたいことがあります。これは、BMI25~30未満の人達の話であり、BMI30以上の人達には残念ながらあてはまりません。
高度肥満になると、逆に危険を招きます。
下の図は、米国の新型肺炎死亡者の方に、どのような基礎疾患があったかを示すものです。
健常者は5%だったのに対し、BMI30以上の高度肥満者は28%に上りました。
香川先生によると、新型コロナの死亡者は糖尿病・心疾患・低栄養·肥満など、栄養の欠陥のある方が95%を占め、健常者はわずか5%で多量のウイルスに感染した人に限られるということです。
ちょっと肥満はOKですが、高度肥満はやはり不健康なのですね。
また、世界最高の医学・栄養学の米国で死者17万人を出したのは、国民の栄養バランスが悪く、それがもたらす基礎疾患もあり、高度肥満者率が日本の10倍、糖尿病が2倍もあるからとのこと。
つまり、新型コロナによる症状の重症化を防ぐには、糖尿病や心疾患などの病気にかからないようにする食事(すでにかかっている方は、これ以上悪くならないようにする食事)が、そのまま予防栄養学となるわけです。
新型コロナに関する栄養学についてもっと知りたい方は、こちらでも情報が得られます。
また、過去のブログで肥満についてこのような記事も書いています。よろしければ参考に!
コロナ太りも悪くない??
このように、ちょっと肥満くらいであれば、新型コロナウイルス感染の予後が良いことがわかりました。むしろ、やせに相当する方の方が注意が必要です。
よく「コロナ太り」という言葉を聞きますが、体重増加が1〜3kgの人が70%と多いそうです。標準体型だった方がそのくらい増えると、もしかしたら「ちょっと肥満」に相当する方が増えたかもしれません。
しかし、香川先生は「適度の運動をして」BMI18.5〜29.9という安全範囲に抑えるのがベストとおっしゃっています。私の課題は、「適度の運動をして」の部分が出来ていないことです。
私も、自粛生活で若干体重が増加しました。普段適当だったお昼ご飯も、テレワークの主人や子どもの分まで用意しようとすると、ちゃんと作って食べてしまいます。その増加分もあったのかもしれません。
でも悲観的にならず、「適度な運動」をすれば、少し体重が増えたのも良しとしようと思い直しました。
これからの栄養学が見直されるかもしれないですね。
体重でお悩みの方へ、参考にしていただければ幸いです。