「献立が思い浮かびません」
「料理が面倒に思えてしまいます」
そう言う方に。調味料も断捨離して、料理をシンプルにしてみませんか?
料理がとても簡単になります。塩の力をもっと信じてみましょう!
塩だけで、実はとても美味しい
我が家の「塩だけ料理」の数々です。
どれも塩だけ。こんなにシンプルなのに、十分な美味しさです。
美味しくて簡単なのに、世のお母さん方はあまりこういう単純な料理をしないように思います。なぜなら、「こんな簡単な料理では家族が喜ぶはずがない」「もっと手をかけないといけない」という思い込みがあるからだと私は思います。
でも、子ども達も主人もこう言うシンプルな料理を好みます。主人は、鶏肉の塩焼きに「柚子胡椒」や「わさび」を足して食べています。
「塩だけの料理なんて」と思ってしまう理由
シンプルに料理するのを邪魔しているのが、料理本やネット情報によるレシピ検索などの「多すぎる情報達」だと思います。
和洋折衷の調味料を駆使し、まるでレストランのように料理を用意することが「良き毋」という風潮はないでしょうか。手をかければかけるほど、「良いお母さん」「頑張っているお母さん」という事にはならないのに、情報がそう思わせてしまっていると思います。
私は栄養士ですが、「和洋折衷の料理を作って、家族が飽きないように」という栄養指導をする方々にたくさん会ってきました。
それを真に受けると、冷蔵庫の中は豆板醤や甜麺醤などの中華調味料から、ケチャップやマヨネーズ、ソース、香辛料の瓶が並び、食材や料理よりも場所を取ります。作る料理のレパートリーもひたすら増え続け、かといって一つ一つの料理が洗練されていくわけでもなく。家事はどんどん複雑になっていきます。
相手が料理大好きで、時間的な余裕もある方ならまだしも、これからは女性もどんどん社会に出ていく時代。核家族化も進む中、食事の用意だけにそんな労力をさけるでしょうか。私は料理を極力シンプルにし、家族皆が美味しいと思える、健康にも良い料理を手軽に作りたいと願っています。
そのうえで欠かせないのが「塩だけ料理」です。
塩だけ料理を美味しくするコツは「塩選び」
塩の味が勝負となるのが塩だけ料理。もちろん、使う塩はちょっと良いものを選びます。
塩は、「精製塩」と「天日塩」に大きく分かれます。日本では岩塩がとれないので、ここでは省きます。
精製塩は、イオン交換膜を使い、科学的に作った塩。99.5%以上は塩化ナトリウムです。手に取ると、サラサラとしています。
一方、天日塩は、海水から作られており、塩化ナトリウムだけではなく、マグネシウムやカルシウムも含みます。(いわゆるニガリ)触ると、精製塩よりもしっとりとして、湿気を感じます。使うなら、絶対にこちらの「天日塩」をおすすめします。
まず味わいが全然違います。精製塩はただ単なる塩気という感じで、しょっぱいだけのように感じます。天日塩は、塩気だけではなくどこか旨味も感じられる味わいです。
動物が舐めている塩には、精製塩にマグネシウムやカルシウムを意図的に添加したものを与えているそう。やはり、動物が生きていくには、塩だけではなく、ミネラルも必要なのですね。もちろん人もそうです。天日塩は、精製塩と比べて値段が上がりますが、それだけの価値がありますので、ぜひこちらを選んでみてください。
ちなみに我が家ではこの塩を使っています。一般のスーパーで買えるものを使うのがモットーです。
価格:405円 |
塩は昔、貴重品だった
塩だけの料理が貧しく思えてしまう、、という方もいるかもしれません。今では塩は安く、どこでも手に入る、家にあって当たり前の調味料となりました。
しかし、流通が発達していない時代、海でしか取れない塩を全国の人が手に入れるのは大変な事でした。塩は大変な貴重品でした。
日本では、海外のように岩塩がとれず、海水からとる必要がありました。そこで、昔から海水を土器で煮詰めて作っていました。各地の遺跡からは、製塩土器が出土されます。
海沿いに住む人たちは塩を得ることができますが、山に住む人たちは得ることができません。そこで、山の人は様々な工夫をする必要がありました。
地域によっては、山の人が木を切って、それを川から下流へ流し、海沿いの人へ木をあげる代わりに塩をもらったり、炭と交換するような物々交換もされていたようです。
海沿いの人々は、牛や馬の背中に塩を乗せて、山中へと売りに歩いたそうです。中でも牛は、道草をエサとして食べてくれるので、エサ代もかからず重宝されたようです。ここから、「道草を食う」ということわざが派生したそう。
今でこそ塩は安価ですが、昔は(特に山中に住む人々は)手に入れるだけでも苦労したのでした。塩だけの料理は、決して貧しい料理ではないのです。
魚の塩漬けや干物は高血圧の元!?
塩だけの料理なんて、塩分の取りすぎで高血圧になるのでは?と心配になっている方もいらっしゃるかもしれません。
特に昔の魚の塩漬けは、魚の周りに塩がたっぷり目で見えるほどついていて、さぞ昔は高血圧の人が多かったのだろうなぁと想像されます。
実際、和食は健康的ではありますが、欠点の一つとして塩分の多さがあげられます。しかし、そこはある秘密があることをご存知でしたでしょうか。
昔は塩を牛や馬で運んだことはすでに述べました。しかし、牛も歩けないような細くて足場の悪い道は、人が背負っていかなければなりませんでした。そうすると、運べる量にも限りが出て、労力もかかるため、塩だけを売りに行っても儲けが減ってしまうという問題が起きました。
そこで、塩だけではなく、魚を塩漬けにして売りにいくことにしたのです。そうすれば、塩だけの時よりも売り上げが上がります。
つまり、よく今でも見かける魚の塩漬けは、魚が主役ではなく塩が主役だったのです。だから、昔の魚の塩漬けは、今のものより非常に塩分が高く、しょっぱいものでした。
では昔の人は高血圧の人だらけだったのでしょうか。実はそうではありません。なぜなら、現在と食べ方が違っていたからです。
例えばイワシの塩漬けの場合、1尾のイワシをなんと4日もかけて食べるのです。まず最初の1日は、魚の周りの塩をなめて終わります。次に魚を焼いて、頭を食べます。さらに次の日にお腹を食べ、最後の日にしっぽを食べる。1尾のイワシを、こんなにもちょびちょび食べるのは、それだけ塩が貴重品だからなのです。
こんな食べ方であれば、高血圧の心配はありません。今だったら、イワシを1尾なんて1回の食事で食べてしまうでしょう。
何なら、2尾くらい食べるかもしれません。1尾を4日かけて食べるなんて、現在の栄養学からすれば明らかにタンパク質不足。
この食べ方をおすすめするわけではありませんが、おかずを食べ過ぎていることから高血圧や糖尿病を引き起こしている現代の私達には何かしら教訓になりそうです。
現代のお医者さんは血圧が高い方にすぐこう言います。「魚の塩焼きや干物は塩分が高いからやめなさい」と。「味噌汁もあまり飲むな」と批判したり、なんなら「洋食にしなさいなんて言うお医者さん」もいます。
昔の食べ方が今と違うことを知っていたら、そういう言い方にはならないでしょう。料理が悪いのではなく、食べ方が悪いということを知って欲しいです。
余談ですが、山中の人たちは、わざとニガリのある悪い塩を買ったといいます。それはなぜかというと、「豆腐」を作るためです。単に塩と言っても、食べるための、生きるための工夫が随所に見られて感心してしまいます。
明治38年になると、塩が専売制となり、日本全国に塩が行き渡るようになりました。それまでは、ずっと人や牛が塩を運んでいたのです。塩だけでなく、魚を漬けることで付加価値をつけて、海沿いの人と山中の人が共に暮らしてきたのが日本なのです。
まとめ
・料理は塩だけでも十分美味しい
・調味料を増やさない方がシンプルに、料理は簡単になる
・塩は貴重品だった。塩だけ料理は貧しくない
・塩分が多い料理は食べる量や食べ方に気をつける
現代ではどこどこの岩塩だとか、どこかの国の調味料だとか、塩以外の調味料であふれています。調味料だけではなく、○○のたれとか、○○のもととか、凝れば凝るほど冷蔵庫はごちゃごちゃとしてきます。レシピ本なんて見て作ろうものなら、あの香辛料がないと、あの調味料がないとと、どんどん調味料の在庫が増えていくでしょう。
そうすると、単に塩だけの味付けでは物足りないような、いけないような気になるから不思議です。私はもっと塩の力を信じたいと思います。シンプルにわずかな塩の味で食べてきた先人の食を思うと、今は如何に余計なことで頭を悩ませているのか、複雑にしてしまっているのかと反省します。
そういう食を、「豊かになったんだから」「楽しいし美味しいからいいじゃないか」と言われる方もいます。もちろん、食べ方は人それぞれ、それを否定する気はまったくありません。
しかし、楽しいから食べるのではなくて、「生きるために食べてきた先人の食」は、とてもシンプルで合理的で、健康的でした。
我が家は、子どもたちがシンプルな味を好むということもあって、子どもが産まれてからは本当にシンプル料理ばかり。おかげで、冷蔵庫も調味料庫もすっきりしています。
食のことを考えるのが面倒になっている方には、ぜひ料理をシンプルにすることをおすすめしたいです。