最近スポーツジムに通いだした管理栄養士のきぶんやママです。スポーツジムのトレーナーさんに、「マルチビタミンのサプリメントを使った方が良いですよ」と言われました。
マルチビタミンのサプリメントは、筋肉増強や健康維持に役立つとのことですが、果たして本当に必要なのでしょうか?
前回のブログでは、スポーツジムに通う人にとってプロテインが必須かどうかを解説しました。
今回は、厚生労働省やその他の公的機関が公表しているデータを基に、マルチビタミンのサプリメントがどのように役立つのか、また必須なのかどうかを管理栄養士目線で検証します。
ビタミンをサプリメントで追加しても運動パフォーマンスはあがらない
運動をしている人だけでなく、アスリートの中にもマルチビタミンをとっている人の話を聞きます。
しかし、ビタミンを余分にとったからと言って、運動パフォーマンスがあがるわけではないという結果が出ています。
日本スポーツ栄養研究誌掲載の「ビタミンと運動に関する最近の知見」では、ビタミンをサプリメントでとることについて以下のように説明しています。
近年では、必要な栄養素が十分に摂取できている条件では、ビタミンをサプリメントとして摂取しても運動パフォーマンスは向上しないということが一致した見解になっている。
または運動パフォーマンスを損なう効果もない、ということも共通の見解であると思われる。
▲ビタミンと運動に関する最近の知見 日本スポーツ栄養研究誌 vol. 11 2018 総説 東田一彦 より引用
ビタミンをとったからと言って、運動パフォーマンスは向上もしないし、損なうこともないと言っています。
しかし、大事なのは「必要な栄養素が十分に摂取できている条件では」という文言。つまり、日々の食事から十分に栄養素がとれていれば、あえてサプリメントは不要だよということです。
必要な栄養素が十分にとれている状態とは、どんな状態でしょうか。そして、自分がそれにあてはまるのかと疑問になりますね。
次は、必要な栄養素がとれている食事について見ていくよ!
必要な栄養素がとれている食事とは?
必要な栄養素がとれている食事なんて、栄養士しか分からないでしょ!という声が聞こえてきそうです。もちろん、細かく計算する必要はありません。管理栄養士である私も、毎日自分の食事の栄養素を計算しているわけではありません。
では、どうやって皆さんに好ましい食事をイメージしてもらえるか。それは色々な方法がありますが、(例えば食事バランスガイドを使用するなど)一番簡単なのは小学校の家庭科でも習ったと思われるこの方法です。
主食・主菜・副菜をそろえること!
主食・主菜・副菜?そんなの習ったかな?すっかり忘れた…そういう人のためにここで復習します。
この3つがそろう食事を常に意識していくと、必要な栄養素がとれた食事に近くなります。
小学校の家庭科で習うことも、一生役立つ知識となるのですね。私は小学生の娘と中学生の息子に、この3つだけは覚えておいて欲しいと思い、それだけは繰り返し伝えています。
中学生では、さらに機能別に5つの食品群に分けたりしますね。でも、私はこの3つを意識するだけでもかなり普段の食事が違ってくると思っていますし、一般の方には十分と考えます。
主食・主菜・副菜をそろえるのは難しい?
中には、普段の食事でその3つをそろえるのは難しいと考える人もいるかもしれません。でも案外簡単です。例えば、下のような食事をとった場合、どれが主食・主菜・副菜にあたるのか見ていきましょう。
- 朝食:ご飯(主食)、目玉焼き(主菜)、味噌汁(副菜)
- 昼食:魚介とトマトのパスタ(主食、主菜、副菜)、野菜サラダ(副菜)
- 夕食:ご飯(主食)、サバの味噌煮(主菜)、煮物(副菜)、すまし汁(副菜)
案外、よくある普通の食事ではないでしょうか。このように意識すると、今の食事で何を補えば良いのかが見えてくると思います。
それでもサプリメントにたよらざるを得ない場合
しかし、主食・主菜・副菜をそろえる食事がどうしても難しい人もいると思います。その場合にはサプリメントの利用が有効になることがあります。
- 朝・昼・夕食のうち食べていない食事があり、それが続いている場合
- 食事量が極端に少ない場合
- 運動量と比べて食事量が極端に低い場合
これらのケースでは、ビタミンのサプリメントが不足分を補う役割を果たします。ただし、サプリメントに頼りすぎると過剰摂取のリスクもあるため、注意が必要です。
とりすぎによる健康被害に注意
食事からとるビタミンで過剰摂取、つまり、とりすぎになることはほぼないと言われています。しかし、サプリメントでビタミンをとると、簡単にとりすぎ状態となることがあります。
近年、ビタミンのサプリメントによる過剰摂取の事例が出てきています。
- ビタミンAの過剰摂取:頭痛やめまい、骨の脆弱化
- ビタミンDの過剰摂取:カルシウムの蓄積による腎臓への負担
水溶性のビタミンは、とりすぎても尿中に溶けて排泄されますが、脂溶性ビタミンは体内に蓄積されやすいのです。
マルチビタミンは、水溶性も脂溶性もどちらも入っていることが多いため、より注意が必要です。服用する際は、決められた用量・用法を守って使用することが必要です。
▼詳しく知りたい方はこちら
国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所:健康食品をお使いの方へ~過剰摂取の危険性~
厚生労働省の見解
厚生労働省によると、基本的なビタミンやミネラルは「食事から摂取することが望ましい」とされています。サプリメントはあくまで補助的な役割を果たすものであり、健康食品としての位置付けです。
その理由は、やはり過剰摂取による健康被害のリスクがあるからです。
▼詳しく知りたい方はこちら
厚生労働省:健康食品の正しい利用法
◆過去のブログ こちらも参考になります↓
まとめ:日々の食事の状況次第
スポーツジムに通う人にとって、マルチビタミンは「必須」ではありません。主食・主菜・副菜の3つがそろう食事を意識できれば、必要な栄養素を補える食事に近づくことでしょう。
ただし、食事だけで栄養をとることが難しい場合や、特定の栄養素が不足している場合には、ビタミンのサプリメントが役立つこともあります。
しかし、サプリメントには過剰摂取のリスクがあることを肝に銘じておきましょう。食事からビタミンをとれれば一番安心安全です。この記事が日々の食事を見直す一助となれば幸いです。