最近スポーツジムに通いだした管理栄養士のきぶんやママです。スポーツジムに通う人の中には、プロテイン(サプリメント)を日常的にとっている人も多いでしょう。
「運動量が増えることで筋肉をつけるためにたんぱく質などの栄養が不足してしまうので、プロテインをとりましょう」とトレーナーさんから勧められることがあります。
しかし、果たしてスポーツジムに通う人全員が本当にプロテインが必要なのでしょうか?
今回は、厚生労働省が公表しているデータやガイドをもとに、プロテインの必要性について、管理栄養士の目線で解説します。
スポーツジムに通う人はもちろん、通っていないけれどプロテインに興味がある人は参考にしてくださいね。
プロテインは必要量以上とってもさらに筋肉が増えるわけではない
プロテインは、とればとるほど良いと考える人もいます。確かに、もともとあまり食事がとれていない人が運動後プロテインをとると、筋肉の合成にたんぱく質が使われて筋肉が増えます。
しかし必要量以上とっても、より筋肉が大きくなるわけではありません。必要量以上とったたんぱく質は、筋肉の合成ではなく、エネルギーとして使われます。
エネルギーとして使われるなら害はないと思われがちです。しかし、あまりに過剰にとってしまうと肝臓や腎臓に負担がかかってしまうのではないかという見解もあります。
◆より詳しく知りたい方はこちらも参考になります。
アスリートのたんぱく質栄養の考え方:日本スポーツ栄養研究誌 第2巻7-12
尿中尿素窒素排泄量を指標とした男子アスリートにおける1食当たりのたんぱく質摂取量の上限に関する検討:日本スポーツ栄養研究誌 第2巻13-20
プロテイン(たんぱく質)はどれくらいとればよいの?
プロテイン(たんぱく質)の目標量
厚生労働省が提示している「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、以下の表のようにたんぱく質の目標量を定めています。
男女、年齢、生活活動の強度(運動の強度や頻度)によって必要なたんぱく質量が変わっていますね。目標量に幅があるのは、運動の頻度や種類、もともとの筋肉量等が人により様々だからです。
- 身体活動レベルⅠ:ほとんど運動習慣がない、テレワークの人など
- 身体活動レベルⅡ:座る仕事だが、職場内での移動や立位での作業、通勤、買い物、家事、軽いスポーツをしている人
- 身体活動レベルⅢ:移動や立位の多い仕事、スポーツなど活発な運動習慣がある人
腎疾患や糖尿病等、たんぱく質量に制限がある人は病院の指示量に従ってくださいね。
アスリートのプロテイン(たんぱく質)必要量
アスリート並に日常的に強度の高い運動をしている人は、推奨量が1.2~2.0g/kg(体重)/日とされています。これは、筋肉の合成に有効に利用されるたんぱく質の量です。
こちらは年齢ではなく体重で見るのですね。ご自分の体重をかけてみてください。
例えば、体重60kgの人であれば、推奨量は72g~120gとなります。
- (例)体重60㎏の人の場合:推奨量 72g~120g/日
アスリート並に運動しているわけではない人は、身体活動レベル別の表を参照してください。
日常の食事で十分おぎなえる?
では、日常の食事だけでどれくらいのプロテイン(たんぱく質)がとれるでしょうか。我が家でよく使うたんぱく質を含む食品に含まれるたんぱく質量を見てみましょう:
- 鶏むね肉(200g 一つ):約40g
- 鶏手羽肉(300g 5本くらい):約54g
- さば(100g 半身):約27g
- 豆腐(1丁):約15g
- 納豆(1パック):約8g
- ゆで卵(1個):約6g
- ご飯(150g 1杯):約4g
- 牛乳(100g 1杯):約3g
ご飯もたんぱく質とれるんだ!と、たまに驚かれることがあるので、わざと入れてみました。ちなみに、たんぱく質がとれる食材は肉・魚・卵・豆類ですね。それではこの食材で、1日の献立を考えてみましょう。
- 朝ご飯:ご飯、豆腐とえのきの味噌汁、浅漬け、納豆
- 昼ご飯:さば缶詰と豆苗の卵とじ丼、水菜のサラダ
- おやつ:カフェオレ、クッキー
- 夜ご飯:ご飯、鶏手羽肉と大根の煮物、もずくのスープ、鶏ハムサラダ
青字がたんぱく源です。ご飯は太字にしました。ちなみに、鶏ハムサラダの鶏むね肉は1/4食べたとします。これでたんぱく質は合計135gでした。
いかがでしょうか?普通の献立でも割とたんぱく質がとれると感じていただけたでしょうか。仮に1品2品足りなくても、100g近くはとれそうです。
ちなみに、私は年齢40代の女性、生活活動強度はⅠ程度です。最近スポーツジムに行きだしましたが、まだ1回体験したのみ。今後Ⅱにあがったとしても、表からすると目標たんぱく質量は67~103なので、プロテインを飲まなくても十分なたんぱく質がとれている計算になります。
こんな人はプロテインをとっても良いかも
しかし、忙しくて食事を十分にとれない場合や、動物性たんぱく質を摂取しないベジタリアンの場合は、プロテインサプリが役立つこともあります。
私はある大学生の食事記録を採点した経験がありますが、我が家の献立と同レベル食べられている人もいれば、ほとんど食事がとれていない人もいました。
初めての一人暮らしで、自炊しながら生活するのが難しい人もいると思います。そういう時は、プロテインを飲むのも一つの選択肢だと思います。
- 朝昼夜ご飯のうち食べていない食事がある人
- 主食(ご飯)・主菜(たんぱく質源)・副菜(野菜や果物)がそろっていない人(特に主菜)
- 全体的にエネルギーが足りない人
- ベジタリアンの人
- アスリート並に運動しており、体重もあるが、食事からたんぱく質がとれていない人
このような人は、プロテインも一つの選択肢に入れてよいと思います。
まとめ:必ずしも必要ではないが、条件次第ではあり
スポーツジムに通う人にとって、プロテインやマルチビタミンは「必須」ではありません。
一般的な食事をしっかりとっている人であれば、プロテインサプリメントがなくても十分なたんぱく質をとれるからです。
また、プロテインはとればとるだけ筋肉量が増すわけではなく、筋肉に合成できるたんぱく質量は限られた量だということも頭に入れておくと良いですね。
すでに自分がどれくらい食事からたんぱく質をとれているか知ることも大切です。知った上で、足りなければプロテインを利用するのも選択肢の一つかと思います。
利用する場合は、自分の食生活や運動量を見直し、必要に応じてプロの指導を受けることをおすすめします。健康的な身体づくりのため、日々の食事と運動習慣を大切に頑張りましょう!