主人が家族性大腸ポリポーシス|大腸を温存する手術と低用量アスピリン療法の実体験

家族性大腸腺腫症の大腸温存手術とアスピリン療法 病気

主人が家族性大腸ポリポーシス(家族性大腸腺腫症・FAPとも呼ばれる)と診断を受けている、妻のきぶんやママです。

この病気の治療は、ポリープのガン化を早くから防ぐ目的で、予防的に大腸を切除する手術が一般的でした。

しかし、厚生労働省の研究として、大腸を温存しながらポリープを内視鏡で取っていく試験が開始されました。主人は2013年から2025年2月現在まで、大腸を温存しながらポリープを除去する手術を受けています。

さらに、薬でポリープが減ることを期待した「低用量アスピリンの服用によるポリープ減少の臨床試験」にも参加しました。

本記事では、主人の体験を通じて、大腸を温存しながらポリープを切除していく治療法の様子と、低用量アスピリン療法の生活についてお伝えします。※治療法の正式名称(家族性大腸腺腫症に対する大腸がん予防のための内視鏡介入試験)

同じ病気を持つ人や家族に参考になれば幸いです。

家族性大腸ポリポーシス(家族性大腸腺腫症)の内視鏡的ポリープ徹底摘除術とは

内視鏡的ポリープ徹底摘除術(Intensive Downstaging Polypectomy、IDP)は、内視鏡を用いて大腸内のポリープを徹底的に除去する方法です。
この手術により、大腸を温存しながら大腸がんのリスクを低減することが期待されています。日本では、多施設共同研究(J-FAPP Study III)において、IDPの安全性と有効性が確認され、2022年度から保険適用となりました。

入院の様子

入院

大腸を取りたくなかった主人は、厚生労働省が2012年から実施している「家族性大腸腺腫症に対する大腸がん予防のための内視鏡介入試験」に参加し、1年に2回せっせと内視鏡でポリープを除去してもらっています。

◆家族性大腸ポリポーシス(家族性大腸腺腫症)の内視鏡切除術について詳しく書かれています
CareNet(Webサイト):家族性腺腫性ポリポーシス、新たな治療戦略を日本で開発(J-FAPP Study III)

この治療を受けるとどんな入院生活を過ごすのか気になる人のために、主人が毎回体験している「入院から退院までのスケジュール」を簡単に説明します。

入院前:消化に良い食事で1日過ごす

手術は入院2日目に行いますが、入院前から消化に良い食事をとって過ごします。胃や大腸の内視鏡検査をしたことがある人なら想像がつきますよね。

入院した後、食事は病院で提供される消化に良い食事をとります。手術前日の21時以降は何も食べられません。お茶や水は飲めます。

◆消化に良い食事ってどんな食事?をまとめた記事もおすすめです

手術当日:絶食して下剤を飲む

手術当日は、大腸内視鏡検査の人と同じように朝ご飯を食べず、下剤を飲みます。少し前までは2Lの下剤を飲む必要がありましたが、最新の下剤は1.5Lですむようになり、主人が喜んでいます。

味はポカリスエットを薄めたような?味だそうです。これをすべて飲むのには、一つコツがあるらしく。(このコツは主人が自ら編み出したらしいですが)

「下剤服用中、温かいお茶を適宜はさみ、身体を温める(上着を着る)」←下剤を最後まで飲むコツ

下剤は冷たいことが多いので、身体が冷えてしまうのだそう。そのため、温かいお茶で身体を温めながら下剤を飲むと、比較的飲みやすくなります。あくまでこれは主人による主観です(^^;

水分量が増えてしまってお腹いっぱいになるのでは??と私は疑問なのですが。私も大腸の内視鏡検査を受ける時は試してみたいです。

入院前から消化に良い食事をとるようにしていたこともあり、正午前には看護師さんからすんなり合格をもらうのだそうです。ちなみに、最後の便は薄い黄色で、この色味を看護師さんによる目視で確認して、3回合格をもらうと出陣準備が整います。

看護師さん、いつもありがとうございます。

穴あきのパンツに着替えていざ手術

お尻に穴の開いたパンツに履き替えて、手術室に向かいます。手術といっても、内視鏡検査とほとんど同じで、お尻から内視鏡カメラを入れます。

主人は何千個とポリープがあるので、先生も疲れるからか(?)手術室に呼ばれるのはいつも一番最後。軽い人から順に呼ばれるのでしょう。呼ばれるのはいつもだいたい15時~16時。

鎮静剤を打たれるのですが、なかなか効かず。後日、先生から「FAPの人はなんか鎮静剤効かない人が多いんだよね」と言われました。

鎮静剤を普通量入れても、本人は「まだ四則計算できます」と先生に報告。3倍量入れても寝てくれず、結局そのまま続行されました。

直腸から入れて小腸と大腸の境目の付近までいったん挿入。そのあと、空気を入れたり青い溶液をかけながら、大きめのポリープを取っていきます。

最初の頃は直径5mm以上のものからどんどん取っていったのですが、手術10回以上にもなるとどれも小さいボツボツばかりになるので、先生もどれを取ろうか迷うみたいです。

主人はそんな様子を横になりながら一緒に見ているのですが、痛みは感じないそう。あまりに多いので、2人の先生が交代しながら取っていきます。2時間近くかかるので、主人は段々眠くなっちゃうのだそうです。

最近も300~350個くらい取りました。取ったポリープの検体は、一部研究機関に送られます。どうか、この病気の新しい治療法が早く見つかりますように…

術後の生活

術後

大腸ポリープは日帰り入院で取る人もいますよね。しかし主人は、数が数だけに出血しやすく、すぐに退院すると危険なので、いつも3泊4日の入院になります。

入院後は普通に生活できますが、なるべく消化に良いものを数日続けること、強度の強い運動を控えること、便に血が混じっていないか確認することを注意されました。

退院当日に歩きすぎたことがあり、その時は便の表面にべったり血がついてしまったことがありました。退院後は安静にしましょう!!

これまでたくさんのポリープを取ったわりに、一向に減っているようには見えません。もともと数えられないので(数が多すぎて)、実際のことろは分かりませんが。

数が減ることは期待せず、ガン化しないようにすることが大事と思って続けています。

医療費

医療費

この手術は厚生労働省のお墨付きなんだから、無料なんでしょ??と思われたでしょうか?残念ながら、普通に3泊4日の入院代、手術代がかかります。だいたいいつも7万円くらいかかっています。

内視鏡による手術なので、保険診療内ではありますが、この入院を1年に2度ずつ何十年とやり続けるのは大変な医療費がかかります。

いやはや、結局はお金大事ですね(T-T
ポリープ1つにつき100円とかで研究機関に売れれば良いのになぁとぼやく今日この頃。

低用量アスピリン療法への参加

薬

手術後、少しでもポリープの再発を防ぐため、低用量アスピリン療法の臨床試験(厚生労働省)にも参加しました。

この試験は、FAP(家族性大腸ポリポーシス)患者を対象に、低用量アスピリンの服用が大腸ポリープの再発や増加を抑制する効果を検証するものです。

臨床試験の様子

この臨床試験のために、主人は低用量アスピリン(1日100mg)を1日1錠飲みました。毎日飲まないといけないのですが、忘れそうになるので、歯磨きの横に置くようにしていました。朝の歯磨きをする時に思い出して飲めるようにしたのです。

そして、一定期間後の大腸ポリープの数や大きさの変化を手術の度に比較しました。

一部の研究では、アスピリンの服用によりポリープの再発リスクが約40%減少したとの報告もあり、期待していました。

主人の結果

もうすぐ研究終了となりますが、残念ながら、主人の場合あまりポリープの数は減少しませんでした

ただ、先生と主人が見た感じでなんとなくの判断であり、きちんと精査したわけではありません。今後、全員の集計結果が出て、効用があるのか判断されるでしょう。

個人差もあるようですね。今後も多くの治療法が検討されて欲しいものです。

◆家族性大腸ポリポーシスの人は家族形成で悩んでいる人も多いようです。こちらのブログも参考に!

まとめ

家族性大腸ポリポーシス(家族性大腸腺腫症)は、これまで大腸を全部摘出する治療法が一般的でした。

しかし、予防的に大腸を取ってしまうのは抵抗がある、または、全摘はしていない人にとって、大腸を温存しながらポリープを除去する内視鏡的ポリープ徹底摘除術(IDP)は、生活の質を維持しながら治療を行える有効な選択肢であると感じました。

ただ、1年に2度程度入院しなければならないので、精神的にも金銭的にも負担であることは変わりません。

主人はそれを含めても、この治療法があること、それを実施してくれる先生方にとても感謝しています。いつか主人のポリープによる実験で、新たな治療法が生まれてくれることを期待しています。

FAPと診断された人やそのご家族にとって、このブログが、一つの選択肢である治療法を知るきっかけになってくれれば幸いです。

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